マグマ

よんでくれてありがとう

【日記 2023 02/13】使ってくれてアリガト!

 帰りの電車で高校生の三人組が「てかカラオケ行きたい!」と言っていて、高校生すぎて、高校生のイラストかと思った。

金子邦彦『小説 進物史観』

 円城塔のエピソードゼロ(という触れ込みに惹かれて読んだ)。著者の金子邦彦は円城塔の博士課程時代の指導教員であり、作中の物語生成アルゴリズム円城塔李久」が作家・円城塔の名前の由来なのだ。「円城塔」などという奇妙な文字の並びを、一体全体どうやってひねり出したのか非常に気になるところだ。

 学術的でシャープな記述と唐突なボケとが織りなす硬軟取り混ぜた文体のリズムに円城塔と通じるものを感じた。特に、冒頭の「熊」のくだりをはじめとしたナンセンスギャグの温度感がかなり好みだった。

小川哲『君のクイズ』

 競技クイズプレイヤーが言うところの「発声はしてないけど聞こえる」という現象がいまだに飲み込めない。実際には、発音の繋がりとか問題を読み上げる口の形とかの複合的な情報から次の文字が推測可能(な場合がある)ということのようだ。

 「クイズプレイヤーが驚異的なタイミングでクイズに回答できるのは推論の積み重ねによるものであって決して魔法的技能ではない」という主張が作中に登場し、これが視聴者に理解されないことがクイズプレイヤーにとっての切実な問題として描写されるのだけれど、それでもやっぱり不思議なものは不思議だ。

付喪神の現代的なあり方について

 100年使われた器物は付喪神になるという。あたりを見渡しても100年使っているものはない。付喪神が生まれた時代の人々にとって、同じものを修理しつつ100年使うというのはどの程度リアリティを伴う想像だったのだろうか。

 YouTubeで100年分再生されたフリー素材のSEやBGMは電子的霊性を獲得して付喪神になるかもしれない。パソコンのメモリに眠る削除済みファイルや消去された誤字を大量に引き連れ、夜な夜な愉快に踊っていてほしい気持ちがある。

 器物が付喪神となることが嬉しいことなのかどうかをいまだに知らずにいる。「100年間も大切に使ってくれてアリガト!」という気持ちで変身しているイメージがあるので、誇らしい気分にはなると思う。